兵庫県知事選をめぐる言説

 兵庫県知事選をめぐって事実とは異なる言説が流布されているようです。例えば、①斎藤前知事にパワハラはなく百条委員会でも否定されている、②おねだり疑惑についてもおねだりはなかった、③亡くなった県職員の死亡理由と知事との因果関係は立証されていない、④内部告発の内容には虚偽相当内容が含まれていて百条委員会は結論すら出せていない、などです。

 何が事実かは一次情報を確認すればスグに分かることです。百条委員会について語るのであれば、百条委員会の議事録を確認すべきでしょう。

 今年7月に設置された地方自治法100条に基づく「文書問題調査特別委員会」は年末、すなわち12月末までに報告する日程で調査を進めています。したがって、現時点で結論が出ていないのは予定通りであり、内部告発がウソだったからということでは全くありません。議事録を読めば分かることですが、内部告発の内容は概ね事実であり、斎藤知事にパワハラは多数あり、内部告発をした元県民局長を定年退職させずに降格処分にしたのは斎藤知事です。これは、公益通報者保護法が定める不利益処分の禁止にあたり、違法です。

 おねだりについても、赤ワインをもらって自宅で飲んだことは斎藤前知事が認めているところです。そもそも受け取っていないと言っていたコーヒー・メーカーを実は受け取っていた事実が判明したところから、内部告発文書が注目されるようになりました。

 内部告発には、直接かかわったのが斎藤知事ではなく片山副知事というものも少なからずあります。とはいえ、片山副知事が勝手にやったというよりは片山副知事が斎藤知事の意向を受けて、斎藤知事に成り代わって遂行したと思われるところがあります。この点については地方自治法100条に基づいて設置された特別委員会の調査で明らかにされることでしょう。

 ほんの数ヶ月前のことなのに、事実をなかったことにして別のフィクションを創作する方がいて、それを素直に受け入れてしまう方がいるようです。民主主義の前提として、有権者が正しい選択をすることです。何が正しいかは、それぞれの有権者の判断ではありますが、事実認識については共有すべきです。

 今回の兵庫県知事選挙では、兵庫県とは縁もゆかりも知識も関心もない人物が立候補し、しかも自らは当選する気がないと言い放ち、兵庫県知事選挙を遊び道具にしていしまっています。この御仁は7月の東京都知事選挙も遊び道具にしました。

 こうした蛮行に対して、私は明確に拒否します。

 もちろん、公職選挙法改正などで制度的不備を手当する必要がありますが、それとともに有権者が民主主義をあざ笑うような行為を明確に否定することが必要です。

 兵庫県知事を選ぶということは、兵庫県民の暮らしに直結することなのですから。

目次